踊るように描く、描くように踊る
神田さおりの創作は、まるで音楽に合わせて踊るような、自由奔放なものだ。
彼女は絵筆を握るのではなく、自身の身体を筆にしてキャンバスの上を駆け巡る。跳ね、回転し、時に拳で叩き、時に爪でひっかきながら、絵を描く。
その姿は、白髪一雄やジャクソン・ポロックが生み出したアクション・ペインティングの流れを汲みつつ、独自の表現へと昇華している。
彼女の幼少期は、バグダッドやドバイといった異国の地で過ごした。異文化の中で育ち、日本という故郷に強烈な憧れを抱いた。
その記憶は彼女の作品の中に息づいている。アラビアのモスクのモザイク、日本の千代紙の模様、砂漠の風が運ぶ色彩。これらが彼女の中で混ざり合い、踊りとなり、色となってキャンバスに解き放たれるのだ。
彼女のパフォーマンスは、単なる絵画ではなく、音楽や照明、香り、空間全体を巻き込んだ体験型の表現だ。
昨年12月には、世界的なアートフェアであるART BASEL Miami Beachに女性アーティストとして参加し、現地でダンスペインティングのパフォーマンスを成功させた。
世界中のトップギャラリーやアートコレクターが集まるこの場で、彼女は「Vibration」シリーズを披露した。力強い筆致と色彩の調和が特徴のこのシリーズは、情熱と静寂の間にあるエネルギーの波を表現し、観客を魅了した。
「Vibration」シリーズは、色が波のようにうねり、キャンバスが舞台へと変わる作品群だ。
神田の動きがそのまま画面に刻まれ、即興性と計算された構成が共存する。彼女のパフォーマンスは、観る者を作品の一部に引き込み、ただの鑑賞ではなく、共鳴する体験へと導く。そのエネルギーは、まるで音楽が視覚化されたような感覚を生む。
破壊と再生のリズム
神田の作品は、常に変化し続ける。描いた瞬間に壊し、壊した瞬間に生まれる。それはまるで、生と死が繰り返される宇宙の営みのようだ。
彼女にとって、絵を描くことは「祈り」であるという。「踊る」という行為は、意図や思考を超えたところにある。意識ではなく、本能で動く。
そうして生まれた線や色は、まるで命そのもののようにキャンバスの上で躍動する。
彼女の作品には、人間の根源的なエネルギーが込められている。
熱、鼓動、衝動、喜び、そして哀しみ。それらすべてが彼女の身体を通して絵の具となり、画面に定着するのだ。だからこそ、彼女の作品には圧倒的な「生」が宿っている。
また、彼女は現代のテクノロジーも積極的に取り入れる。
VRやARを活用し、より多くの人々が彼女の「祈り」を共有できるようにしている。これまでの美術史を尊重しながらも、新たな表現の可能性を模索し続けているのだ。
あなたの中の「踊る魂」を目覚めさせる
神田の作品を見ていると、自分の中にも眠っている「踊る魂」があることに気づく。
私たちは日々、論理や規則の中で生きている。しかし、彼女の作品は「本能」に訴えかける。もっと自由に、もっと大胆に、もっと素直に生きていいのだと。
もし、彼女の作品を手にしたらどうなるだろう。
部屋に飾るだけでなく、そのエネルギーに包まれる。日常に新しい刺激が生まれ、視点が広がるかもしれない。彼女の作品は単なる「絵」ではなく、見る人の感覚を揺さぶる体験そのものなのだから。